農家の利益を生み出すハウス環境コントロールシステム

 糖度の高いトマトやいちごなど、ブランド化された高品質な農作物はスーパーマーケットなどでも見かけます。付加価値の高い農作物は、地域の特産として観光にひと役買い、生産者の皆さんに多くの利益をもたらします。こうした作物を生産する為には適正な管理が必要になりますが、株式会社ニッポーの農業用コントローラは、収穫量や品質を向上させるため、高い精度で徹底的な生産管理を省エネで実現しています。

会社紹介 株式会社ニッポー
代表取締役社長 若槻憲一
〒699-1822 島根県仁多郡奥出雲町下横田750-1
TEL(0854)52-0066 FAX(0854)52-1142
https://www.nippo-co.com/


 温度・湿度などの環境管理システムの企画・開発・製造を行う。創業期は、衛生通信の周波数を一定に保つための「恒温槽(こうおんそう)」が大手通信会社に採用され、事業規模の拡大に成功。恒温槽で培われた技術を活かした温度・湿度の調整システムは、養蚕業や農業へも転用され、昭和50年頃には事業規模がさらに拡大した。その後、製造拠点を島根に移して、農業用コントローラの自社ブランドの企画・開発・製造を開始。直接農家へ足を運び、要望や改善点を丁寧にヒアリング、企画・開発に生かすユーザー目線の商品開発と、高精度な環境管理技術に定評がある。ODMでは、厨房機器の制御装置のほか、各種産業用制御機器、IoT機器、ITシステム開発が事業基盤となっている。


インタビュー

右:取締役工場長 内田 博隆 氏
中:商品開発課 技師 杠 明彦 氏
左:商品開発課 岩田 拓磨 氏

株式会社ニッポー
Q1.そもそも農業用コントローラにはどのような種類がありますか?
A.細かな調整に対応できるよう、およそ10種類の製品ラインナップを揃えています

 農業用コントローラといっても、時代や求められる役割によって機能が異なります。そのため、当社だけで10種類近くの製品を用意しています。具体的には、灌水作業(いわゆる水やり)を自動で行うコントローラ、天窓を操作してハウス内の温度を制御するコントローラ、ハウス内の温度を測定し暖房・冷房を制御するコントローラ、炭酸ガスを測定し制御するコントローラ、湿度を測定し光合成を促進するコントローラ、そしてそれらを統合的に管理するコントローラなどがあります。また近年では、ハウスの状態をスマートフォンで確認したいという要望に応え、「EyeFarm Cloud」という遠隔監視システムも開発しました。
 統合的な管理システムは、新しくハウスを建設される方に利用されることが多い一方、既存のハウスをお持ちの方は、例えば「灌水システムは導入済みなので、温度管理システムを導入したい」といった個別要望が多く、細かなニーズに対応していくうちに、製品数は必然的に増えてきました。既存の設備を活かしながら、省力化や収穫量・品質の向上を目指せるよう、私たちは農家さんに提案しています。


Q2.製品の強みはどこでしょうか?
A.「超現場主義」のソリューション提案

 当社製品には、3つの大きな強みがあると自負しています。1つ目は高精度でハウス内の環境を把握できる優秀なセンサー、2つ目は自社で開発・設計・製造まで行うことによる価格優位性、3つ目は現場の声を拾って開発に生かす徹底したソリューション提案です。
 1つ目のセンサーについては、日射の影響を受けない百葉箱と同じコンセプトのセンサーを当社は使用しています。電子式湿度センサーの場合は年に5%ほど測定値が狂ってしまうことがありますが、当社のセンサーであればそのようなズレは発生しません。正確に環境を測定することで、適正な生育環境を整えます。お蔭様で高い評価をいただいており、島根県農業技術センター様では「果樹」の部門で、高知県農業技術センター様では全て当社製のセンサーで揃えていただいております。
 2つ目の価格優位性については、システム開発・設計・製造を外部に委託せず、自社で行うため、コストが抑えられるという点が挙げられます。低価格でありながら耐久性も高く、例えば40年前に納品した製品を今も現役で使用している農家さんがいるほどです。
 3つ目のソリューション提案については、ユーザー目線による開発を徹底している点が強みです。農業用コントローラは、システムの専門家だからと言って「売れる製品」を作れる訳ではありません。農業を理解していることが重要です。当社は、開発技術者がボイスレコーダーを持って何度も農家さんに通い、ヒアリングの結果を開発に活かしています。創業当時から農業に関わってきた経験も大きく、現場目線での使いやすさや細かな調整が可能な点を高く評価いただいています。

株式会社ニッポー


株式会社ニッポー
Q3.今後の展望を教えていただけますか?
A.EyeFarm Cloudで収集したデータをAIなどと組み合わせ、新サービスの開発に役立てる

 農業用コントローラの売れ行きは、農家さんに対する補助金の有無に大きく左右されます。いくら営業をかけても、販売数が伸びない時期もあります。ハウスを新しく1棟建てるのに以前ならば3~4千万円ほどでしたが、昨今の建築費高騰で約7千万円ほどになっています。国内がこのような状況なので海外展開も視野に入れるべきかもしれませんが、さらに大きなコストとリスクが伴うことから、我々の様な中小企業では躊躇します。消耗品のメンテナンスや補修が、海外では非常に困難だからです。
 今後は「EyeFarm Cloud」で収集したデータを活用し、AI時代に対応できるシステムの開発を進めていく予定です。高精度なセンサーを搭載した当社の製品で収集したデータは、提供するだけでも大きな価値があると考えています。時代の変化に応じたシステムや製品開発、そしてデータの活用を通じて、次世代の農業に貢献していきたいと考えています。


製品情報

「農業用コントローラ」

 温度・湿度・飽差・灌水など全てを統合的に制御するハイエンドモデルのほか、灌水制御の専用機、天窓管理による温度調整専用機など、様々なニーズに合わせた装置をラインナップしている。また、ハウス環境を遠隔で管理できるモニタソフト「EyeFarm Cloud」はスマートフォンでも監視可能で月額2000円〜でサブスクリプション対応している。


トップへ戻る