会社紹介 |
日本製紙株式会社 江津工場 工場長 浅野 康雄 氏 〒695-0011 島根県江津市江津町1280 TEL:0855-52-6000 FAX:0855-52-6029 https://www.nipponpapergroup.com/sp/about/branch/factory/npi/goutsu/ 1938年にレーヨン短繊維を生産する工場として操業を開始。1951年に当社の前身である山陽パルプ株式会社と合併し、木材の完全利用を推進する工場として溶解パルプを製造するほか、木材中の糖分を利用した酵母・核酸製品や、リグニンを利用した製品など、さまざまな機能性化成品を製造している。 2017年からは、食品や化粧品向け添加剤用途のCNF(セルロースナノファイバー)の量産設備を稼働し、2021年には、今後、需要の伸長が期待される車載用リチウムイオン電池や食品に利用されるCMC(カルボキシメチルセルロース)を増産する設備を新設した。 |
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当工場は、もともとレーヨンを製造する会社でしたので、紙を作る設備はございません。幾度にわたるⅯ&Aを経て現在の日本製紙となったわけですが、古くから現在も変わらず、レーヨンの元となる溶解パルプの製造をメインで行っています。
溶解パルプは木材からセルロースを取り出して製造するのですが、当工場の溶解パルプは非常にセルロース純度が高く、医療用や食品用のセルロース製品製造にも使用されます。日本はもとより世界でもトップクラスの品質と自負しています。
各製品を見ていただくと、「様々な機能を有する化成品の製造工場」であることがわかると思います。原料は木材ですので紙と同じですが、当工場の場合、木材成分をセルロース、ヘミセルロース、リグニンに分け、それぞれを活用した製品を製造しております。 セルロースから溶解パルプを製造し、溶解パルプを原料にして、食品、工業用途に利用されるCMC(カルボキシメチルセルロース)、更にCMCを原料にして、食品や化粧品にも利用されるCNF(セルロースナノファイバー)を製造します。ヘミセルロースが分解した糖分は酵母培養の栄養源として使用し、粉ミルクの栄養源としても利用される核酸、家畜等の餌となる酵母の製造を、リグニンはコンクリートの強度を増すための混和剤や、重金属類の燃焼回収用バインダー等に活用されるほか、工場で使用する蒸気、電力をつくるボイラー燃料としても使用しております。木材成分を余すことなく活用し、様々な製品製造を行っております。
当工場ならではとなると、セルロース純度の高い溶解パルプから製造した高性能「CMC」と、もうひとつは「独自酵母」を利用して製品化した飼料「トルラプラス🄬」です。
前者のCMCは、古くからある技術で、国内では数社が製造しています。ただし、当社のCMCは、最大粒子径を細かく制御することで、使用時の粗大な未溶解ゲルを低減して、平滑で光沢のあるきれいな表面に仕上げることができます。この高性能CMCは、リチウムイオン電池に使用されております。リチウムイオン電池の負極はカーボン等を銅板に塗りますが、そのカーボンを分散安定化させるため、CMCが使用されます。当社製高性能CMCを使用すると負極スラリー(カーボン)の分散安定性、及び未溶解ゲル低減による歩留まり向上の実現と、塗工表面も滑らかに塗ることができます。リチウムイオンバッテリーは極板の小さなピンホールでも電池性能が低下するようなデリケートな電池ですので、表面は滑らかな方が良く、当工場のCMCが選定されます。
後者の「トルラ酵母」ですが、当工場で発見した酵母菌を培養して製造します。
木材成分中のヘミセルロースを含む木材糖化液の中で育つのが「トルラ酵母」です。
pH4の酸性の木材糖化液中で育つ唯一の酵母です。雑菌が生育しない酸性蒸解液下でも木糖を利用して生育可能であり、体の中に免疫作用を安定化させる核酸を貯める特徴があります。これにカビ毒を吸着する酵母細胞壁を合わせた「トルラプラス🄬」を開発しました。成長促進や免疫機能を安定化させる家畜用サプリメントとして販売しており、島根県の松永牧場の関連牧場で行われた実証試験では乳牛の出血性腸症候群(HBS)の発生の低減が認められました。
日本製紙は、「3つの循環」(「持続可能な森林資源の循環」「技術力で多種多様に利用する木材資源の循環」「積極的な製品リサイクル」)という3つの資源循環をまわすことができる強みを持っています。この「3つの循環」を、大きく、早く回していくことで、持続可能な社会形成に貢献することができます。管理している森林は国内外併せて、約16万haあります。技術力を生かして、江津工場においては、トルラ酵母や高性能CMC、CNFの開発を進めてきました。木材成分中のリグニンは工場のエネルギー源としても活用しています。
そのような中で、木材を活用した新しい製品を開発して業績を伸ばすことで、環境負荷を低減することにも寄与できると信じております。
最近では、CMC製造新設備も稼働し、この生産販売を伸ばすことを進めています。この製品にはまだまだ伸びシロを感じています。