農作業の時間短縮&省エネを実現し、
農作物のブランド化に繋げる

 稲刈り後、地力の回復を図るため田を耕す「秋耕」。翌年の肥料の散布量を低減できるだけでなく、田から発生するメタンガスを半分まで抑制する効果があるとのデータもある。しかし、耕起には大変な労力と燃料などコストが掛かることから、近年では秋耕を省略して春耕のみに留めている農家も多い。
 同社が開発したトラクタの耕起系作業機ディスクハロー「KUSANAGI」は、従来の耕起作業機の約3倍の効率で作業できる製品だ。高効率で低燃費、運用コストも安くなるうえ、同社の先行するグリーン関連製品と合わせれば、高品質な有機米の生産やブランド化にもつながる。「KUSANAGI」は縮小傾向にある国内農業にグリーンビジネスで革新をもたらす可能性を秘めている。
会社紹介 三菱マヒンドラ農機株式会社
CEO 取締役社長 齋藤 徹 氏
〒699-0101
島根県松江市東出雲町揖屋667-1
TEL:0852-52-2111
https://www.mam.co.jp//

 大正3年から農機具の開発製造を行い、本年で110年周年を迎える島根発の農機メーカー。持続可能な農業への貢献を目指し、省力化やリソースの開放、企業間連携をキーワードに、グリーンビジネスの領域で従来にないビジネスモデルの確立に乗り出している。

インタビュー

CEO取締役社長 齋藤 徹氏
CTO取締役/技術本部長 行木 稔氏

三菱マヒンドラ農機株式会社
Q1.グリーンビジネスを始めたきっかけは
A.従来から強みを持つ分野として、技術を育ててきました

 「KUSANAGI」が革新的な製品として注目していただけるのは非常に嬉しく思いますが、従来から当社は事業の中でグリーンビジネスに関する技術を育ててきました。
 例えば、当社が開発したペースト施肥田植機は、土中にペースト状の肥料を注入しながら田植えを行える製品で、肥料を土中に埋めることで河川への肥料流出を防ぎ、水質障害を防ぐとともに肥料散布の省力化ができる技術として開発されました。近年では粒状肥料に使われるマイクロプラスチックの流出も問題視されており、省力化と環境保全を両立できるペースト施肥技術が注目されています。
 さらに、水田では雑草を抑制するために薬剤をまいたり、田植え後に除草機を使って何度も作業をしたりするのですが、当社は田植えをしながら紙製のマルチを田面に敷設できる田植機を製品化しています。この製品は有機米生産農家のために作られたもので、敷設する紙マルチは雑草を抑制し、40-50日で微生物に分解され自然に還ります。除草剤を使う必要もありませんし、除草機のように田植え後に手間も掛かりませんから、環境にも優しく作業も軽減されます。
 嬉しいことには、紙マルチ農法で栽培した有機米は高価格で販売されており、農業経営の安定にも繋がっています。大都市部を中心に健康志向がトレンドになっており、有機米は生産が追いつかないほど人気があり、国内農業では貴重な成長ジャンルとなっています。このように、従来からグリーンに関連して当社が育ててきた技術が近年改めて認められてきています。
 今回新たに市場投入した「KUSANAGI」は、耕耘に係る労力とコストを大幅に低減し、環境にも優しい農業を実現することにつながる製品です。グリーンでかつ極めて実用的な製品として大きな反響をいただいており、健康的で美味しい食の生産に大きく貢献できると確信しています。


Q2.開発で苦労したことなどを教えてください
A.海外で使われる大型製品を、日本仕様に最適化するための研究開発です

 「KUSANAGI」はショートディスクハロー(以下ディスクハロー)という、トラクタに取り付ける高効率の作業機です。昨秋に販売を開始したところ大変好評をいただいています。従来使用していたロータリという作業機に比べて3分の1程の時間で仕事が終わるわけですから、人件費も燃料費も、格段に下がります。実際にご購入いただいた農家さんからも「使わない手はない」と言っていただける代物です。
 実はこの製品にはモデルとなる海外製品があります。2019年頃からマヒンドラグループの大型製品を代理店として取り扱い始めたところ、その速さと性能、費用対効果の高さから北海道で一気に製品が広まり、大きく話題になりました。
 YouTubeなどでも話題になる中、ある日「日本の小さな農地に相応しいものに改良してはどうか」と提案がありました。輸入している製品は海外の広大な農地を耕すための農具ですから、100馬力以上のトラクタで使用することを前提としています。幅が3メートル以上もあり重量もとんでもなく重たい。北海道以外の狭い日本の農地では、オーバースペックで扱い辛かったのです。当然、小型のディスクハローを海外で探してみましたが、そもそも海外の農地は大規模なところが多く、小さい道具の需要が無いのですね。そこで国内で使用される50馬力程度のトラクタでも動かせる、軽くて丈夫で機動性の高い「日本向けのディスクハロー」の開発を決心した訳です。
 当初は、半分くらいのサイズに単純にダウンサイジングしてみましたが、思うような効果がでません。ただ単に軽くしただけでは、土を掘り起こしてくれないことに気づきました。海外製の大重量は、土を深く掘り返すために必須だったのです。「これはまずいぞ」と行き詰まりかけたのですが、地面に食い込ませる「チゼル」という爪を組み合わせることで解決できるのではないかと、試行錯誤の挙句「これならイケる」というものが完成しました。日本の農地向けに開発された初のディスクハロー「KUSANAGI」が誕生した瞬間です。

三菱マヒンドラ農機株式会社
三菱マヒンドラ農機株式会社
Q3.今後の展望を教えていただけますか?
A.「持続可能な農業」のモデル確立と地域を活性化できる新ビジネスの開発です

 「KUSANAGI」の販売も頑張っていきますが、それと合わせて国内の農業が縮小する中、地域農業の在り方をアップデートするような新しい農業モデルを確立していかなければならないという気持ちを持っています。地域循環型で高付加価値な地域産品を創っていくお手伝いなど、持続可能な農業の実現のためにフォーカスを広げて新しいビジネスモデルを探していきます。
 また、市場が縮小する中、当社が持て余している施設や設備を世の中の皆さんに広く貸し出せないかとも考えています。例えば、当社では大きな機械製品を入れてマイナス20度環境で低温試験が可能なチャンバー設備のほか、高機能な解析ツールなども保有しており、県内外の企業が新製品の開発工程で、これらの資産を活用してもらえるようなサービスを考えています。さらに、要望があれば当社の経験に照らして「この辺りを削れば、機能を維持したまま材料費を安くできる」などコストダウンのアドバイスも可能だと考えています。これは当然グリーンをテーマにした製品開発においてもお使いいただけますし、開発スピードの向上や、開発費用の抑制、地域産業の活性化などにも繋がり、地域力の向上にも寄与できるのではないかと考えています。
 今後は企業はもちろん、学校や行政・自治体とも連携を進めながら、新しいチャレンジを進めていきたいですね。


製品情報

高効率作業機『KUSANAGI』

 トラクタ動力を使い強制駆動で土を掘り起こし均すロータリに対し、本製品は自重を利用して土を反転させ整地を行うため、作業スピードは約3倍、燃料消費も4分の1に抑えられます(同社比)。耐久性にも優れており、消耗部品の交換コストも下げられる省エネで高性能な農業機械です。


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