社会の地盤を美しく整える

 重金属系の有害物質の吸着剤を作り、土壌や水中の環境改善を行っている大福工業株式会社。同社のグリーンビジネスへの参入は、製品の効果に責任を持つという使命感と、厳しくなる法規制に先手で対応していく必要性を感じたことがきっかけ。早稲田大学と共同で環境改質剤の研究・開発を行い、先端の環境配慮型商材で社会の地盤を支えている。
会社紹介 大福工業株式会社
〒693-0017 島根県出雲市枝大津町2番地7
TEL:0853-21-4151
FAX:0853-21-4152
https://www.daifuku-izumo.co.jp/

 1958年、コンクリートブロックの製造会社として創業。ほどなく施分野にも参入し、土木・建築へと事業内容がシフトしていく。現在では、公共事業に関わる土木・建築をメイン事業としながら、地盤改良、リサイクル、福光石の採掘なども行う。

インタビュー

常務取締役 神田 卓 氏
環境技術部 顧問 小村 一行 氏
環境技術部 主管 三代 江里子 氏

大福工業株式会社
Q1.グリーンビジネスを始めたきっかけ
A.わからないことを探求する中で環境保全製品の開発に繋がった

 わからないことに関して、「自分達で突き詰めて理解しよう」とする姿勢が社内にあったことが、「メタルグリッドA(以下A)」の開発に繋がったと思います。当社は、公共事業の土木・建築業者ですので、本来であれば商品開発はしません。土壌の改善がしたいのであれば、必要な改良剤を購入すれば良いのです。ただ、自分達が使用するものの製造工程や試験結果を自分の目で確認せずに使うことが、「施工業者としての責任」を果たしていないようで嫌だったんです。
 「じゃあ自分達が使う改良剤が、どれだけ土壌改質できるのかを、自分達の目で確かめよう」となりました。専用施設を作り、試験を繰り返していたら、高機能な吸着剤の開発に繋がったのが当該製品のきっかけです。「これはすごいビジネスになる」とか、そのような考えはありませんでした。もともと、製造業だったこともあり、会社として製品を開発することが「当たり前」という気風があるのかもしれません。


Q2.苦労したことなど
A.厳しくなっていく規制に対応しつづけなければならない

 そもそもなぜ開発を始めたかというと、どんどん厳しくなっていく土壌汚染対策法に対応しなければいけないからです。土壌改質の現場では、工場などから排出された有害物質の土壌や水中への拡散をどれだけ減らせるかが求められています。根本的な解決策としては、汚染された土を清浄な土と入れ替えるしか方法はありませんが、コスト面を考えると高性能な重金属吸着剤を使って、汚染物質の拡散を防いだ方が安く済みます。
 当社は、建設残土を改質して、盛土として再利用しています。このため、その土に含まれる有害物質の拡散を抑える必要があり、開発に乗り出しました。初めに開発したのは「A」の前身となる「Z」という製品です。西日本では島根県でしか採掘できない「ゼオライト」という鉱石を材料として用います。この鉱石は、土壌改質や水質改善、脱臭効果が期待できるのですが、セレンやフッ素、ホウ素、六価クロムなど、吸着が困難な物質があり、新製品の開発が望まれていました。その課題を解決したのが、シリカやアルミナを使った吸着剤「A」です。「A」は鉱山・鉱物の研究をしている早稲田大学との共同で開発しております。「ゼオライト」の共同研究からの付き合いがあり、分野の先端で研究しておられる先生のアドバイスはありがたかったです。
 その成果もあり、「A」は「Z」に比べてより多くの有害物質を吸着でき、さらに吸着量も5倍ほどになりました。

大福工業株式会社


大福工業株式会社
Q3.今後の展望を教えていただけますか?
A.大型プロジェクトに備える

 建設残土の再利用や土壌改質などは、法規制が厳しくなっています。重金属などの有害物質の吸着剤の需要は増えていくと思います。四国新幹線計画など全国各地の大型プロジェクトではに、盛土や土壌改質もセットになるはずです。こうした国内需要に対応していくためには、まずは製品の存在を知ってもらわなければなりません。現在は、商社や代理店はもちろんのこと、国内の建設コンサルタントに営業をしています。川上の業界に認知してもらうことで採用率が高くなりますから。
 また、引き続き、大学と共同でさらに吸着力の高い新製品の開発も行っております。公共事業は地球環境の改善にも影響しますから、当社の開発が少しでもこれに貢献出来れば本望です。


製品情報

環境保全関連装置やメタルグリッドAをはじめとした吸着剤

 公共工事の現場や工場跡地を利活用する場合において、健康に影響する可能性のある有害物質には規制が設けられている。現場の土壌や排水において、基準値を超えた数値が測定された場合には対策をとる必要があり、吸着剤を用いた処理が行われている。
 従来製品では、ひ素、セレン、鉛、カドミウムを対象としていたが、高濃度の場合は大量の薬剤を必要とした。また、複合的汚染が発生した場合に六価クロム、フッ素、ホウ素が含まれていると吸着することができなかった。
 当該製品では、従来品に比べて、より高い吸着能力と、従来は吸着困難とされてきたセレン、フッ素、ホウ素、六価クロム等の多種類元素の吸着を1剤で対応することを可能とした。幅広いpH範囲で使用できることから、添加量の削減や処理工程の短縮を実現し、費用や作業負担を軽減することができる。
 使用方法として、水の浸透方向に吸着剤を混合した層を形成する吸着層工法や浸透壁工法、地上排水処理においては、凝集沈殿処理や濾過槽への敷設と組み合わせることで、基準値以下に抑えることができる。


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