○実施報告

価値ある技術を活かそう!
企業連携で加速するビジネス展開

 2024年12月11日(水)、島根グリーンビジネスフォーラム(以下、「フォーラム」と記載)」において、「価値ある技術を活かそう!企業連携で加速するビジネス展開」を開催いたしました。
 フォーラムは、県内企業のイノベーションを推進するため、製造業を中心とした企業が環境・グリーンビジネスに取り組むメリットや最新の情勢・市場動向等に関する情報提供を行うとともに、新事業創出に向けて企業間や産学官のネットワーク創出を図るものです。
 本会では、未活用の特許を有効に活用することで中堅企業・中小企業が新事業・新製品開発を行うスキーム「知財ビジネスマッチング」に焦点を当て、先進者であるPATRADE株式会社の富澤社長、並びに知財保有側として取組を積極的に推進するパナソニックホールディングス株式会社知的財産本部の関氏を招聘し、最新情報をキャッチアップする機会となりました。

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話題提供

 特許はただ守るために取る時代から、有効に活用してもらうために提供される時代に移行してきています。
 大手企業のもとで眠っている特許を活用し、スピーディに新事業・新製品開発を行う手法「知財ビジネスマッチング」の概要とその魅力について、PATRADE株式会社社長・弁理士の富澤正氏より、ご高話を頂きました。

サマリー
  • PATRADE株式会社は愛知県のスタートアップで創業8年目。M&Aよりも手軽な新商品・ビジネス開発手法として、知財ビジネスマッチングを推進している。M&Aであれば買収先の企業の経営責任が生じるが、知財ビジネスマッチングにはそういったリスクがない。
  • 知財ビジネスマッチングを象徴する製品はまだないが、ドラマにもなった池井戸潤氏の小説「陸王」のイメージだ。「陸王」は足袋屋がランニングシューズを開発する話だが、キーとなる技術について、銀行員が他社の技術と繋ぐストーリー。NHKのクローズアップ現代や、フジテレビの「ザ・マッチングオフィス」という番組でも取り上げられている。
  • 知財の最大の利点は独占権だ。一社しか売れないとなれば高付加価値化を実現できる。
  • 例えば、私は別会社にて縁起物商品として、四角形(資格)と五角形(合格)を掛けた鉛筆を販売している。五角形と「合格」を掛けた商品は山ほどあったので、そこに四角形を加えて権利を取得した。これは私しか販売できないため、高額設定を実現しており、実際に売れてもいる。
  • 「白い恋人」と「面白い恋人」の騒動では、「白い恋人」は独占権を根拠に、北海道内で「面白い恋人」の販売を差し止めることが出来た。
  • とはいえ、特許の出願や維持にはコストがかかる。そこで特許を借りるという選択がある。中小企業の知財や技術に、他社の知財を合わせることで、独占権のある新製品を生み出すことが出来る。
  • 日本には170万件の特許があるが、うち80万件が休眠特許。これら特許の多くは大企業が保有している。未活用の理由は市場規模が合わなかったことや、企業の戦略に合わなかったことだ。技術が優れていなかったわけではない。
  • 例えば食品会社のカゴメでは、トマトの収縮後の形が予想できない問題について、トマトにレーザーで細かい穴をあけて水分の流路を作り、ほぼ同じ形のドライトマトが出来る技術を開発した。しかし同社では市場規模が合わず、この技術を眠らせている。普及商品ではなく、少量生産のブランド品として高付加価値付けが出来れば、商品が生まれるのではないか。
  • 休眠特許の一部が、今日「開放特許」として日の目を浴びている。開放特許活用のメリットは、①0から1のアイデアをもらうことが出来る。②特許開発期間を圧縮し費用を削減することが出来る(ライセンス料などは一定発生)。③独占権により模倣品を排除できる。④大企業の信用・ブランド力を背景にビジネスが出来る。の4点だ。
  • 自動車の社内インテリアを商材とするベンチャー企業では、パナソニックの抗菌技術の特許を活用し、色落ちせず防臭防菌効果を持った高付加価値商品の開発に取り組んでいる。
  • 長崎県の障がい者雇用を行っている事業所では、他者の持っている意匠権を活用し、オリジナルの木製名札ケースを開発することにより、障がい者の方が長く取り組める仕事を生み出した。
  • 長野県の食品会社では、高齢者向けの食品が無かったところ、他者が権利を持つ「ジャワしょうがエキス」を活用し、高齢者用の餃子を開発した。こちらは開発に際し、クラウドファンディングも活用した。
  • ピンバッチを製造している企業では、富士通の芳香発散技術を活用し、香りを付与できるピンバッチを開発した。トヨタ自動車の眠気防止技術のアロマオイルという特許も併せ、高付加価値化を図っている。これもクラウドファンディングを活用している。
  • こういった事例は、中部経済産業局の「知財ビジネスマッチングガイドブック」にも多数掲載しているので、ご参照願いたい。
    (https:/www.chubu.meti.go.jp/b36tokkyo/sesaku/chizai_businessmatching/guide_book.pdf)
  • パナソニックでは開放特許を地域貢献に資するものと位置付けているほか、例えば中国電力では従来必要だった着手金を不要と表明している。特許保有側が知財ビジネスマッチングに積極的に取り組んでいる状況であり、中小企業にポジティブな影響を与えるものと確信している。

話題提供

 他社との共創を積極的に推進するパナソニックグループの事業紹介として、「知財ビジネスマッチング」を始めとするオープンイノベーションの取組や、他企業との共創事例、具体的な技術シーズのご紹介を頂きました。

サマリー
  • パナソニックは2022年4月からホールディングスの体制を取り、事業領域ごとに会社を分け、先鋭化を目指している。間接部門も別会社に集約したが、知財についてはさらに子会社を作り、全体の活動をサポートしている。
  • グループ全体で現在9万件の特許を保有している。国内4位ほどの規模。このうち6万件を各事業会社が排他的に使用しており、残りの3万件を研究開発部門の保有の下オープンイノベーションに活用している。1.5万件はパナソニック内で事業化できなかったもの。
  • パナソニック知財のパーパスは「無形資産を巡らし、価値に変えて、世界を幸せにする」。パナソニック本体が松下幸太郎の「水道哲学」に準じ、有形資産を安価で水道の水のごとく世界中にいきわたらせるという使命を表明しているが、パナソニック知財ではこれを無形資産まで拡大。
  • 社内だけでなく社外でもシーズを回し、その接点に共有知を蓄積するゾーンを形成し、共創イノベーションを量産する体制を目指している。このプラットフォームには「技術インデックス」と「知財起点のオープンイノベーション🄬」の2つの柱がある。
  • 「技術インデックス」はパナソニックのシーズをデータベースにしたもの。一般無料公開しており、検索や相談機能を備えている。(https://co-creation.holdings.panasonic/jp/techidx/)
  • 検索については、活用可能なものに限らず2万件以上のパナソニック知財を掲載。技術者の他、営業職の方などでも探しやすいよう工夫している。
  • 「知財起点のオープンイノベーション🄬」については、共創を掲げ、財務的リターンのみを追わず、社会課題への貢献を目指している。そのため、ライセンス料を始めからは取らないなどの体制を取る。
  • 共創においても、当社と事業者の2社だけで行うのではなく、パートナー会社や行政機関、産業支援機関、金融機関等に仲人してもらっている。また、ハード系の技術であればサンプル、ソフト系の技術であればSDK(ソフトウェア開発キット)等開発環境を提供できるよう整備している他、シーズ紹介やビジネスヒント集などの共創促進コンテンツを公開している。
  • 当社のシーズを基に、最終製品に至る企画を持っている企業、製品製造に携わることができるという企業、研究開発のしたい研究者など、すべて大歓迎している。
  • 東北大学とは共創研究所を立上げ、当社シーズを基にした製品開発、技術開発を行っている。
  • 金融機関に企業と繋いでもらい、当社から当該分野の研究開発動向や市場調査を含む、マッチング提案も行っている。事業化への伴走支援や共同研究開発を実施することもある。知財化に関し、セカンドオピニオンを提供することもある。
  • 市町村との連携事例として、愛知県日進市、中京銀行、当社で包括連携協定を結び、市内企業向けの知財マッチング推進の取組を実施している。
  • 鳥取県産業推進機構との協力の事例では、同機関が主催した知財ビジネスマッチングイベントで県内企業と出会い、双方の強みを生かしたスポーツ用品用の圧力センサーの開発に成功した。
  • スタートアップ支援の取組もある。当社のノンコアな特許資産を株式取得と引き換えに譲渡するもの。この促進として、譲渡可能な特許をスタートアップにマッチングする「Peace future」というプログラムを開催しており、東南アジアなど、9か国12政府134社と連携している。当プログラムを通じて、VCとの繋がりや支援を得られやすいメリットもある。今までに400社ほどが参加し、130社がマッチングのためのピッチに参加、50社ほどに特許を譲渡している。
  • 一つの事例として、ARグラスに患者のバイタル情報を表示する製品アイデアを持つスタートアップに特許を譲渡した。緊急医療などに役立つ技術で、現在製品化を完了しており、シンガポール政府や病院がバックにつき、売上を伸ばしている。
  • 同プログラムでは、開発製品をパナソニックが購入するという逆輸入のスキームや、パナソニックの商流に乗せるスキームもある。筑波学研都市に本社を置く社長一人のスタートアップとの協業では、当社が営業面を支援している形になっている。今年のピッチは仙台で開催したが、参加者は徐々に伸びている。
  • 中小企業の皆様には、自社事業の推進にあたり不足する部分について、当社のリソースを活用いただくことを是非ご検討願いたい。
パナソニックのシーズ紹介
光ID 光を目に見えないレベルで点滅させることにより、専用アプリでURL等の情報を読み取ることが出来る。香川県高松市の「むれ源平石灯ロード」では、石で作る照明によるライトアップイベントを行っているが、その照明に当技術を仕掛け、AR情報との紐づけや、スタンプラリーを実装した。
眼・視線センシング 人間の眼の動きのセンシングにより各種行動等の検出を行う。居眠り判定、なりすまし判定、集中度判定、カンニング判定など。
人口光型植物工場システム 光の波長の分布度合の制御により、植物の生育をコントロールする。風や水溶肥料も併せて制御する。
類似症例検索 症例判定に係るアシスタントシステム。
金属光造形複合加工法 金属の3Dプリンター。
鮮魚推定 魚の眼の虹彩部の彩度を測定し、魚の鮮度を測定。スマホアプリに組込可能。魚種ごとに鮮度判定のポイントは異なる点もカバーしている。
★島根県の鮮魚の付加価値付けとして、活用できないだろうか。

フォーラム会員企業のグリーンビジネス取組紹介

 講演の後、セミナーに参加のフォーラム会員企業の皆様より、グリーンビジネスに関する取組紹介を頂きました。

株式会社曽田鐵工/リバース型転写機構を用いた局面へのスクリーン印刷技術


お知らせ&今後のスケジュール

<セミナー>
オンリーワン戦略で未来を掴む
地方で成長し続ける企業のカタチを知る
 本セミナーでは、「私の歩んだ道~クルマ・ものづくりの夢をカタチにする」と題して、岡山県倉敷市でレース用エンジンを開発する株式会社戸田レーシングの戸田社長をお招きします。
 戸田レーシングはエンジンから車体まで企画・検討・設計・解析・製造・組立・試験・レース参戦まで車づくりの工程を自社内で出来る体制を構築しています。「ユーザー一人一人のための自社工場」をモットーにお客様の要望に徹底的にこだわったものづくりについてお伝えします。
 2月5日(水)開催。詳細・お申込みはポータルサイトをご確認ください。

トップインタビュー並びに
会員企業の製品・サービス一覧
 島根グリーンビジネスフォーラムのポータルサイトに、「イチオシグリーン企業のトップインタビュー」並びにフォーラム会員企業のグリーンビジネス製品・サービスの紹介ページを掲載しています。
 県内企業のグリーンビジネスへの取組状況についてまとめておりますので、是非ご覧ください。

グリーンビジネス相談窓口
 (個別相談)の開設
 グリーンビジネスへの事業展開に関するご相談に対し、相談内容によっては、当該分野に詳しい専門家とのメールやオンライン会議など、各種情報提供等を行います。

メールマガジンの配信
 「島根グリーンビジネスNEWS」として、グリーンビジネスや本フォーラムに関連するタイムリーなお役立ち情報を、メールマガジンでお届けします。

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