無駄な光を集めて視認性の高い砲弾型LEDを開発

 LEDの登場で信号機の光はローコストになり、視認性も高まりました。これ以上の改善は見込めないような技術水準に到達しているように見えました。株式会社トリコンは、既存製品と同じ消費電力、販売価格も同等で、視認性を高めた砲弾型LEDの開発に成功。精力的に製品開発を行う同社の発想と技術力は、グリーンビジネスを浸透させるカギになるかもしれません。
会社紹介 株式会社トリコン
代表取締役 上田 康志 氏
〒696-0102
島根県邑智郡邑南町中野3825番地8
TEL:0855-95-2150
FAX:0855-95-0120
https://www.toricon.co.jp/

 鳥取三洋電機株式会社のLED関連の下請け会社として創業。フォード工場審査Q1クラスに認定される品質管理体制と高い技術力を最大限に生かす為、平成12年に別会社の有限会社トリコンを設立。翌年には、大手電器メーカーが開発した当時の最新技術ダブルリフレクションLEDの受託生産を開始する。
 その後、東京の販売パートナーと提携し、売り上げの基盤を築く。現在は砲弾型LEDのリーディングカンパニーとして、オリジナル製品の開発や、短納期の小ロット受注生産などにも対応している。

インタビュー

代表取締役 上田 康志 氏

株式会社トリコン
Q1.ロービームのきっかけは?
A.縮小していく砲弾型LED市場での生存戦略として

 LED市場には大別して弊社が得意とする「砲弾型」、電子部品を基盤に実装する「SMD型」というものがあります。当社は砲弾型に特化しておりますが、市場としてはSMD型の採用が多くなり、砲弾型の市場は小さくなっています。その中でも砲弾型が求められるカテゴリーがあり、そのひとつが信号機です。現在の信号機は、光が全方位に拡散しています。もちろん視認はできますが、「晴れた日の太陽が眩しい時間帯などは、もう少し輝度があっても良いのではないか」と考えたのが商品化のきっかけです。
 信号機は人の目線よりも上にあります。基本的には水平方向と下向きに光が出ていれば良いわけです。このロービームLEDは、上に向かう光を反射させて、下に集光させることで、高い視認性を確保することができます。実際に見ていただいたらわかるのですが(※上記画像を参照。左がロービームLED、右が従来のLED)、斜め下から見ていただくと、明るさが違います。
株式会社トリコン
 この製品は、従来と同じエネルギーで視認性を上げ、開発コストも変わらない為、価格も同等です。採用実績さえ増えれば、信号機はどんどんこのLEDに変わっていくと思います。市場の中でも砲弾型が採用されるカテゴリーに集中して開発を行い、シェアを拡大していく、というのが当社の戦略です。


Q2.苦労したことなど
A.量産化には高い技術が必要になる

 実はこの形状は古くからあるアイデアで、イカ釣り漁船などで採用実験されていた時期がありました。そのため、商品化した際には、苦労せずにすんなりとできました。こういうと、作るのが簡単そうに思えるかもしれませんが、砲弾型LED自体は、経験や知識、高い技術が必要な分野で、新しい製品を考え、試作はできても量産ができないということがあります。
 以前、大手電器メーカーが、新しい規格のLEDを開発されました。実際、試作も終わり、市場に投入する為、中国に大規模な量産工場を作りました。しかし、1年経っても量産化できませんでした。もちろん、技術者も日本から出向しておられました。そんな時、同社の中央研究所がビジネスパートナーの募集を出されたんです。ダメ元で応募してみたところ半年くらい経ってから連絡がありました。内容を伺いまして、3週間ほどで量産化に成功しました。そこから技術力を買っていただき、長年お付き合いはさせていただくことができました。砲弾型LEDは、ノウハウが必要な分野なのです。量産だけでなく、すぐに試作を作ることができる設備と、量産に対応できる設備の両方が必要にもなりますし、簡単に新しいものを作ることはできません。

株式会社トリコン


株式会社トリコン
Q3.今後の展望を教えていただけますか?
A.高い技術力と対応力で日本&世界市場を狙う

 弊社のロービームLEDに関しては、広島県内の国道の情報表示板で順次採用が始まっております。行政が絡むことですので、すぐにシェアが広がるということは無いですが、施工業者からの後押しもあり、これから採用が増えていく見込みです。採用実績が増えれば、全国でも採用が広まると期待してます。
 また、海外展開も考えております。LEDは大量に作らないと割に合いませんので、大企業は小ロット生産はやらないんです。もしかすると試作の為の設備も無いかもしれません。一方、市場からは試作品を求める声も多くあります。当社は、そのような開発を伴う試作に対応することで、大企業との差別化を図っています。世界市場でも似たような状況のため、小ロット・多品種・高品質な対応ができる当社の強みを生かして、海外進出をする予定です。現在、島根県のサポートもあり、販売代理店を探すことができ、北米へ展開する為に動き出しました。ただ、実務的なところが意外とネックになっておりまして、価格設定だったり、輸出業務だったりで苦戦しているところではあります。今後は、技術力と対応力で日本と世界の市場を狙います。


製品情報

「上向きの光を下向きに集光するロービームLED」

 信号機で使用するLEDは高所にある為、見上げて視認します。その際にLEDからは上下左右に光が照射されますが、上方向の光は必要ありませんでした。その無駄となる光も下方向に集光することで、標準LEDよりも強く視認性の高い光を対象者に届けることができ、安全性を高めることができます。
 また、この技術は通常のLEDと同じ工程で作ることができるため、標準LEDと同等価格を実現し、ローコストで社会実装が可能です。


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